2012年12月30日日曜日

eViacamを翻訳しました

eViacamという、ウェブカムを使ってユーザーの顔の動きに合わせてマウスポインターを操作するアプリケーションがあります。GPLv3+の自由ソフトウェアです。

私がeViacamを知ったのは、2010年11月に、gnome-accessibility-listで流れた1.4リリースアナウンスでした。日本語翻訳されていなかったので、いつか翻訳しようと思いながら数年が経ってしまいました。ようやく今日一次翻訳が上がりました。

というわけで、レビューしてくださる方を大募集中です! とりあえずgithubにパッケージを置いています。翻訳ファイル(po)だけテキストで取得することもできます。インストール方法については公式サイトの情報をご覧ください。開発元へのマージ依頼はこれから進めていきます。

コメントはブログでもtwitterでもメールでも何でも結構です。

# それにしても、intltoolを使ってないものはおなじgettextによるi18nでも正直戸惑いました。




2012年12月26日水曜日

米ホワイトハウス、教育機関での自由ソフトウェアを促進すよう請願が提出される

先日の記事でも紹介したアメリカ合衆国のオンライン請願システム、We the Peopleに、教育機関で使用するソフトウェアを自由ソフトウェアに置き換えていくよう、請願が提出されました (promote the use of free software in our schools. Libre Office, Gimp, GNU Cash and other GPL software which is cost free)。

We the Peopleを通じた請願については、一定期間内に一定数の署名が得られれば、ホワイトハウスは請願に対する回答を行う義務が生じます。これまで同性婚支持の正式表明やSOPA/PIPAに対する回答など社会的に大きな影響を持つ対応が行われてきました。今回の請願については、2013/01/16までに25,000の署名が受理規定数となり、それを満たせばホワイトハウスから何らかの応答が得られることになります。

ただ、今回の請願の内容自体は単なる要望に近いとも言え、自由ソフトウェアを教育現場で普及させる利点などについてはっきりとした説明があるわけではないように感じられました。今後どう展開していくのかわかりませんが、オバマ大統領の対応については期待を持ちつつ見て行きたいと思います。

ちなみに、We the People自体が、ホワイトハウスがGPLv2+で提供している自由ソフトウェアです。ソースはgithubから取得できます。これは他の政府や機関においても、主権者のオープンな政治参加を促すためにWe the Peopleを自由に利用することを考慮しているためです。もちろん他の政府とは日本も想定されています。

2012年11月24日土曜日

自由/オープンソースソフトウェア 女性向けインターンシップ

毎年GNOMEプロジェクトでは、Outreach Program for Womenといって、プロジェクトに参加したい女性向けにインターンシップ形式のプログラムを提供しています。もともとは、Google Summer of Code のひとつとして行なわれていたものですが、GSoCとは独立して企画されるようになりました。奨励金として5,000米ドル(!)も支給されます。2012年は日本からの参加者もいらっしゃいました。

今回はGNOME企画で、他にもいろんなプロジェクトを巻き込み、プログラムを行うことになりました。そこで、挑戦してみたい人も多いだろうと、お知らせの案内を翻訳してみました (原文)。もし興味のありそうな知人や、学校、コミュニティなどをご存知であれば、ぜひ教えてあげてください。案内文もご自由に転送してくださってかまいません。

== 以下、案内文 ==
自由/オープンソースソフトウェア (FOSS) とは、そのソフトウェアの使用、複製、学習、変更、および改良を行う自由をユーザーに与えるものです。FOSSの貢献者は、ソフトウェアの開発にはこれがベストな方法であると考えています。FOSSは、社会の役に立ったり、プロジェクトに関わる楽しい協調的なコミュニティも生まれたり、また多くの人に影響を与える革新的な改良を誰でも行えるからです。

より多くの女性にFOSSに参加してもらおうと、いくつかの組織が女性向けアウトリーチプログラム (Outreach Program for Women) のインターンシップを、2013年の1月2日から4月2日にかけて行います。応募の締め切りは2012年12月3日です。応募にあたっては締め切り日までに、参加・貢献したい各プロジェクトにお申し込みください。参加組織は次のとおりです。

 * Deltacloud - クラウドごとの違いを吸収する抽象化レイヤー
 * Fedora - GNU/Linuxベースのオペレーティングシステム
 * GNOME - GNU/Linuxベースのデスクトップ環境とアプリケーション
 * JBoss - Javaベースのアプリケーションサーバーと関連プロジェクト
 * Mozilla - オープンWebの目標を推進するソフトウェア
 * Open Technology Institute - ユニバーサルアクセスを目指す大衆的なネットワークインフラストラクチャ
 * OpenITP - 迂回技術開発者のサポート
 * OpenStack - クラウドデプロイ・管理ソフトウェア
 * Subversion - フル機能搭載のバージョン管理システム
 * Tor - 匿名化プロキシネットワーク
 * Wikimedia - Wikpediaおよび関連プロジェクト向けwikiソフトウェアとインフラストラクチャ

参加者が、担当メンターからガイダンスを受けたり、プロジェクトチームや該当のFOSSコミュニティの他の人たちと協働する際は、自宅からリモートで行います。プロジェクトでの活動には、ソフトウェア開発、システム管理、ウェブ開発、ユーザーエクスペリエンスデザイン、グラフィックデザイン、ドキュメンテーション、マーケティングなどが含まれます。プログラムの奨励金は5,000米ドルです。インターンシップにフルタイムで参加でき、いままでOutreach Program for WomenあるいはGoogle Summer of Codeに参加したことがない女性であれば、誰でも自由に応募できます。特に、インターンシップ期間が夏休みにあたる南半球の大学の女子学生は、ぜひご応募ください。

詳細や応募方法については、 https://live.gnome.org/OutreachProgramForWomen をご覧ください。このプログラムはGNOME Foundationによって企画されています。もしよろしければ、このメッセージを関心のある大学やコミュニティブループに転送して、この企画を多くの人に知ってもらうのにご協力ください。

FOSSの活動に参加する機会はいつでもあります。FOSSに貢献してみたいという気持ちがあれば、このインターンシップに限らず、いつでもご参加ください。
== 以上、案内文 ==

2012年9月10日月曜日

We the Peopleオープンソース化のアナウンスを翻訳しました

ちょっと間が空いてしまいましたが、先月の8月23日にホワイトハウスから、オンライン請願システムのWe the Peopleをオープンソース化したというアナウンスがありました。ライセンスはGPLv2またはそれ以降のバージョンとなっています。ソースはgithubから取得できます。

で、それに関するホワイトハウスブログの記事が非常に印象的だったので、翻訳してみました。もちろん私が個人的に訳した非公式のものです。原文のURLは、 http://www.whitehouse.gov/blog/2012/08/23/open-sourcing-we-the-people です。なお、ホワイトハウスの記事は、そのCopyright Policyに基づいてCC BY 3.0で公開されています。

以下、翻訳文です。


We the Coders: ホワイトハウスのオンライン請願システム、We the Peopleをオープンソースに

We the Peopleのソースコードの公開をお知らせできて感激しています。オンライン請願システムのWe the People は、国民がホワイトハウスに声を届ける方法としてこの1年を通じてよく利用されました。

We the Peopleの稼働以来、数千もの請願が、全国から数百万の署名を集めました。請願を受け、ホワイトハウスは、オープンなインターネットとSOPA/PIPAパピーミル学生ローンによる負債の減免について回答を行い、破綻した移民制度の是正に向けた取り組みを進め、大統領の結婚防衛法にたいする反対の立場を再確認しました。また、他にも多くの対応があります。  

オバマ大統領は、昨年のオープンガバメントパートナーシップでWe the Peopleについて語った際に、「(We the Peopleの)テクノロジーを共有し、世界中のあらゆる政府の利用に供することで、各政府が自国民にも同様の機会を提供できるようにする」ことを約束しました。そして現在、他の国々をはじめ、最小規模の組織や市井のハッカーにいたるまで、誰でもソースコードを取得し、利用できるようになったのです。

We the Peopleのオープンソース化にあたり、もっとも期待していることのひとつは、広く一般からフィードバックや、アイデア、コードの貢献をいただけることです。このシステムを改良するためにできることはたくさんあり、国中の、そして世界中のデザイナーやエンジニアがもっと簡単に協力できるようにすることで利益を得られます。README docのロードマップから、いくつかお気に入りのものをご紹介しましょう。

*API 開発*

現在のプラットフォームでは、ユーザーは、We the Peopleのサイトを通じて請願の作成または署名を行うために、直接ウェブサイトに訪れる必要があります。ユーザーが、サードパーティのウェブサイトを通じて請願の署名ができるように、APIを開発したいと考えています。ただし、回答を受信できる有効なメールアドレスを確かめる一定の検証が必要になります。 

APIを開発すれば、このツールの魅力は非常に大きなものになります。他の組織が、We the Peopleの受理規定数に達する有効署名の登録を行うとともに、請願のユーザーエクスペリエンスおよびフローをそれ自身の環境内で制御できるようになります。

*ソーシャルメディア統合の改良

現在のプラットフォームでは、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを利用した、請願、回答、およびサイトの他のコンテンツを共有する最低限の機能はあります。将来的に、ソーシャルネットワークの文脈で請願に署名できるようにする (たとえば、Facebookの「いいね」など) ことで、より簡単に請願の署名ができるようにしたいと考えています。 

*モバイルインターフェース*

We the Peopleは、モバイルブラウザーであろうと単独のアプリケーションであろうと、ウェブのモバイルトラフィックのますます大きな部分を占めるモバイルデバイスからアクセスしやすいことが重要です。

とはいえ、アプリケーションのソースコードを公開して、誰でもソースのダウンロードや改変ができ、自分のプロジェクトに利用できるようになったという事実からは、もっと大きな可能性が生まれます。誰かがソースを取得するのが非常に楽しみです。

皆さんが、Drupalの開発者であったり、We the Peopleの利用や開発への貢献に興味があれば、ソースコードをチェックアウトして、ご連絡ください。皆さんがソースコードをそれぞれのプロジェクトでどう利用しているについてもぜひ知りたいので、Twitterの@WHWebまでご一報ください。あるいは、直接私の@macon44宛にどうぞ。

また、今回の大規模なソースコードリリースは、私たちにとって初めてとなるもので (すでにリリース済みのものは多少あります)、広くオープンソースコミュニティに参加してもらうにはどうすれば良いか、ご意見をぜひお寄せください。私たちの取り組み全般に関するご提案も大歓迎です。


Legal Information
This work is licensed under a Creative Commons Attribution 3.0 License
Author: The United States Government
Translator: Jiro Matsuzawa
Creative Commons License

2012年9月9日日曜日

New Committer of GNOME Japanese team

The GNOME Japanese translation team's got a new committer, Yasumichi Akahoshi!
I appreciate his contribution to the GNOME Project. He is also the leader of documentation team of VineLinux, which is a Linux distribution from Japan.

I'm very excited to hear the news. I was only one in charge of committing. I couldn't handle all the work, especially review work before committing. I'm so sorry about that. But now, we have a new committer. He should activate the team more!

2012年9月8日土曜日

Ubuntu Magazine Japan vol.09 出ました!





今回は、私はまったく関わっていませんが、前回参加させていただいたご縁もあって見本誌をいただきました。本当にありがとうございます。
まだまだ読み切れていないくらい内容が盛りだくさんで、いつもながらお買い得です。

私はいつも、中面のグラビアを堪能しつつ「うぶんちゅ」へという流れで読み始めるんですが、いやぁ「うぶんちゅ」は本当におもしろいですね。内容は読んでのお楽しみということで。

個人的にすごい楽しみだったのが、翻訳特集です。今回のテーマは、Launchpadを使ったUbuntuの翻訳という、まさにズバリです。そしてなんと執筆者が、かずはまさん、黒瀬さんコンビという、もう贅沢すぎだろ、と。内容は、まったく初めての人でも始められるように、非常に細やかなガイド形式になっています。Ubuntuリリーススケジュール上での位置付けや、翻訳ノウハウについてもしっかり説明されているので、すでに翻訳やっているという人も大きな知見が得られます。ボリュームも大きくかなりの力作ですね。

特集の「かゆいところに手が届く!厳選フリーソフト88」は、非常に参考になりました。「もっと早く教えて欲しかった...!」の連続です。うぶまが執筆陣のオススメソフトが満載なので参考にならないわけがないですね。

今回は、プログラミングネタもあっていいですね。おがさわらさんによるScratchの記事があります。「プログラミングは楽しい!!」というのがテーマになっていて、印象的でした。
ちなみに、これはシス管会長も同じことを言ってるんですよね。
「便利とか必要とか そゆんじゃなかった。楽しいよCUI! それを知ってほしかったの」
http://www.aerialline.com/blog/wp-content/comics/ubunchu02/
まさにそういうことですね。

で、CUIというと、コマンドライン再入門ですね。今回はシェルスクリプトがテーマになっていて、プログラミングネタが盛りだくさんですね。私はシェルスクリプトが好きで、この特集はいつも楽しみなんですが、今回も勉強になりました。

まだまだ他にも記事がたくさんあるので、楽しみです!!

2012年3月19日月曜日

オープンソースカンファレンス 2012 Tokyo/Spring に参加しました

3月16日、17日と、オープンソースカンファレンス 2012 Tokyo/Spring に参加しました。
個人的な雑感をつらつらと綴ってみます。

今回は日本語GNOMEユーザー会として、「GNOME翻訳入門」と題したセミナーと、ブース出展を行いました。ブースは結果的にほとんどDoc-Ja Archiveにいることになりましたが。

セミナーは、一般ユーザーが翻訳を通じてオープンソースプロジェクトに参加する、という点を念頭において、初めての方向けにFLOSSへの参加・貢献はすごく簡単なことなのです、ということをお伝えしようとしました。セミナーを担当するのは初めてだったので、うまくできたかどうかは心許無いですが・・・(私は吃音者なのでその面でも不安はありました)。とはいえ、約20名ほどにご参加いただきましたが、少しでも参考になるところがあれば、幸いです。雨の中朝早くから来ていただきありがとうございました。
https://www.ospn.jp/osc2012-spring/modules/eguide/event.php?eid=65
セミナーの写真 (@kazken3 ありがとう!)
http://twitpic.com/8x9l4i

ブースはサイコーでした。今回はMomongaの@fut_nisさんとコーディネーターの@tkusanoさんにご協力をいただいて、すごく楽しい展示ができました。あっと人目をひくGNOMEの面白いところを紹介してくださり、私自身が来場者目線で楽しかったくらいです。展示で人を魅せるスキルは私には決定的に欠けているので、とても参考になりました。

Doc-Jaの BoFもおもしろかったです。思わぬ方の参加もあり、いろいろな方面から参加があったようです。休みなくぶっ続けでしたが時間の立つのも忘れていました。そのノリで周りの人たちにご挨拶するものうっかり忘れてしまい、自分のあほさ加減を呪いました。

最後に、今回はすごく楽しかったのですが、ただ楽しいだけでなく少し感慨深いものでもあります。私がOSCに初めて参加したのが、ちょうど1年前のTokyo/Springで、そのときは一般参加でした。いま親しくさせてもらってる人たちの多くと直接お会いできたのは、この1年前の東京でした。その1年後、またこうして彼らと顔を合わせることができました。継続して活動できたのは本当にありがたいことだと感謝しています。私は、周りを見ずに言いたいことを言ったり、厄介ごとを撒き散らしたりして周りの人を困らせることがたくさんあります。それにも関わらず拒絶せずに緩く受け入れてくれている周りの人たちのおかげで、なんとかやってこれています。本当にありがとうございます。今後ともどうぞよろしく。

2012年3月1日木曜日

itstool 1.1.1 と 1.1.2 との、POエラーハンドリングの違い

予想以上に長くなってしまったので、言いたいことだけ先に書くと、
itstool を利用した POのXMLエラー検出を利用している人は、1.1.2から挙動が変わっているのでご注意ください、--help みると手っ取り早いです、
ということです。


itstoolって?
GNOMEの翻訳ドキュメントのビルドに使用される、itstool というツールがあります。
以前はxml2poというものがあり、xml2poは現在ではosbsoleteとされています (が、実際にはまだよく使われています。今後itstoolに置き換わっていくでしょう)。
なお、itstool自体は GNOME プロジェクトのものではありませんが、その開発者は、Shaun McCance さん (GNOME プロジェクト、また GNOME ドキュメンテーションチームのコアメンバー) であり、GNOME とは強い結びつきがあります。
詳しいことは公式サイトをご覧ください。


itstoolでは、POにXML上の問題があれば検出できる
itstool には xml2po にはない大きな魅力があります。
それは、POに記述されたXMLタグの整形式不整合など、XMLの構文として問題があれば、ビルド時にエラーとして検出できるというものです。
xml2poでは、整形式が崩れていた場合は、「何も無かった」ことになります。出力されたXMLからは該当のタグ部分が静かに抹消され、正常に終了します。
XMLドキュメントの翻訳では、タイプミスなどでPOの時点で整形式が崩れてしまっていることはよくあります。本当によくあります。本当に。
なので、翻訳者の方は、ぜひitstoolで自分のPOを事前にチェックしてみるとよいでしょう。


エラー検出が、問題になることも
上記の通りXMLの構文的問題があればitstoolがエラー終了するので、その結果として、モジュールのビルドが失敗します。
毎日 jhbuild でビルドしている人にとっては大問題です。
POにエラーがあればエラーとして終了するのは、翻訳者にとってはありがたいのですが、その言語に興味のない大部分の人には迷惑な話です。
実際に Damned Lies (GNOME翻訳管理サイト) 側で、コミット前にそれをチェックしてビルドエラーを未然に防ごうという提案もあります (GNOME Bug 667207)。


itstool 1.1.2 で エラー => 警告 へ
この問題はitstoolで対応することとなり、デフォルトではエラーではなく警告メッセージを出力するに留めることになりました (freedesktop.org Bug 41254)。
それまでどおりエラーとして検出する場合は -s (--strict) オプションを使用します。
上記の修正は、2012/02/05リリースの1.1.2から利用可能です。
なので、itstool を利用した POのXMLエラー検出を利用している人は、1.1.2から挙動が変わっているので注意するとよいでしょう。


「実際の」例
gnome-user-docs のスペイン語のpoに以下のバグがあります(2012/03/01現在)。guiタグの開始と終了が逆転しています。
es/es.po:
 4361 #: C/contacts-edit-details.page:30(item/p)
 4362 msgid "When you are finished, click <gui>Back to Contact</gui>"
 4363 msgstr "Cuando termine, pulse </gui>Volver al contacto<gui>"

実際にビルドしてみましょう。

1.1.1 での挙動
$ /usr/bin/itstool --version
itstool 1.1.1
$ /usr/bin/itstool -m es/es.mo C/contacts-edit-details.page
Traceback (most recent call last):
  File "/usr/bin/itstool", line 974, in <module>
    doc.merge_translations(translations, opts.lang)
  File "/usr/bin/itstool", line 657, in merge_translations
    self._check_errors()
  File "/usr/bin/itstool", line 336, in _check_errors
    raise libxml2.parserError(self._xml_err)
libxml2.parserError:  Entity: line 1:  parser  error :  Opening and ending tag mismatch: p line 1 and gui
 ions/blank/" xmlns="http://projectmallard.org/1.0/">Cuando termine, pulse </gui>
                                                                                ^
 Entity: line 1:  parser  error :  Extra content at the end of the document
 ions/blank/" xmlns="http://projectmallard.org/1.0/">Cuando termine, pulse </gui>
                                                                                ^

$ echo $?
1
$

終了ステータスがエラーになっています。
PythonのTracebackまで出力され、当然ビルドは中断します。


1.1.2 での挙動
$ /opt/gnome-3.4/bin/itstool --version
itstool 1.1.2
$ /opt/gnome-3.4/bin/itstool -m es/es.mo C/contacts-edit-details.page
Warning: Could not merge translation for msgid:
When you are finished, click <gui>Back to Contact</gui>
$ echo $?
0
$

Warningが出力され、正常終了します。


1.1.2 で --strict オプションをつけた場合の挙動
$ /opt/gnome-3.4/bin/itstool --strict -m es/es.mo C/contacts-edit-details.page
Error: Could not merge translations:
 Entity: line 1:  parser  error :  Opening and ending tag mismatch: p line 1 and gui
 ions/blank/" xmlns="http://projectmallard.org/1.0/">Cuando termine, pulse </gui>
                                                                                ^
 Entity: line 1:  parser  error :  Extra content at the end of the document
 ions/blank/" xmlns="http://projectmallard.org/1.0/">Cuando termine, pulse </gui>
                                                                                ^

$ echo $?
1
$

エラーとして検出され、エラー終了します。
Tracebackは消えています。


ちなみに xml2po だとどうなるか
$ xml2po -m mallard -e -t es/es.mo C/contacts-edit-details.page > es/contacts-edit-details.page
$ echo $?
0
$ sed -n '22,24p' es/contacts-edit-details.page
   <item><p>También puede añadir, editar o eliminar la cuenta de correo-e, el número de teléfono, la dirección postal o la información del enlace.</p></item>
   <item><p>Cuando termine, pulse </p></item>
  </steps>
$

ご覧の通り、バグのあったguiタグは何事もなかったかのように消えており、文字通り「何も無かった」ことになっています。これは非常に悲しいことです。

2012年2月20日月曜日

GNOME の String Freeze をおさらいする

最近、意図しない形で String Freeze にわずらわされてしまい、調べていくなかで自分でもちゃんと理解していなかったことがいくつかわかったので、備忘録として String Freeze についておさらいしておこうと思う。
ついでに、i18n、翻訳に関わっている/関わりたい人や、GNOMEデベロッパー(やコミッター)になりたい人の参考にもなれば幸いである。


何?

String Freeze とは、モジュール開発において、「翻訳対象」文字列の追加や変更を制限することである。
それが必要となる理由がわからなければ、翻訳者になれば実感できるので、これを機会に参加しよう。


どんな制限か、もうちょっと正確に

次の2点が制限される。

  • 翻訳対象メッセージを新規に追加すること
  • すでに存在するメッセージを修正すること

上記は原則やっちゃいけないことになる。
ただし、どうしても対処する必要があれば、翻訳プロジェクト(GTP)コーディネーターの同意を得た上で、リリースチームおよびドキュメンテーションチームへ通知を行えば、一時的に String Freezeを解除することができる。
GTPの許可は、gnome-i18n@ 上で行われるため、翻訳メンバーはSring Freeze解除を事前に把握しておくことができる。また、実際に変更がコミットされた場合は、String Freezeブレークの通知がgnome-i18n@に自動送信される。それを契機に翻訳作業に着手できる。

一方で、以下のケースは、String Freezeを破ることに該当しないので、開発者は好き放題更新してよい。もちろんString Freezeブレークの通知などもない。

  • 翻訳対象でない文字列の操作 (=> PO影響なし)
  • 翻訳対象メッセージの削除 (=> PO影響あり Obsoleteになる)
  • 翻訳者向けコメントの追加 (=> PO影響あり コメントが追記される)
  • すでに存在するメッセージと同一内容メッセージの追加 (=> PO影響あり、ロケーションが追加される)
  • ドキュメントの更新


さらに、ちょっと微妙なケースもある (よく揉めるところ)。
以下のケースは、String Freeze ブレークに袖が引っかかっているけれど、明示的な許可なくやってもかまわないことになっている。

  • すでに存在する翻訳対象で「ない」文字列を、翻訳対象メッセージとする (gettextのラッピング忘れの対処など)
  • POTFILES.in に記載が漏れていたファイルの追記 (全く新規ファイルの追記はダメ)
  • domain の変更 (おそらくこれはかなりレアケースだと思う)

上記は、翻訳対象メッセージに変更があった旨の通知がgnome-i18n@に送信される。特に一番目のケースはモジュールメンテナーでもなければそれが新規追加のメッセージなのかどうか即座にわからないともあるので、該当のコミットがGTPの許可を得たものかどうかでしばしば揉める原因となる。そのため、余計な手間や混乱を招かないためには、このケースであってもGTPに通知しておくことが望ましいとされている。


フリーズ対象のモジュールはどれ?

一言で言うと、Damned Lies の「開発版」のリリースセットに含まれるモジュールが該当する。それ以外はSstring Freezeになることはない。モジュールメンテナーがString Freezeしたことを通知することがあるが、それは単なる親切心であったり、ここでいうString Freezeの制約などは一切ない。


フリーズはいつ始まる?

リリーススケジュールに具体的な日時が明記されているので、それを参照のこと。
その日時を持って、該当するモジュールのmasterブランチは一斉にフリーズとなる。


フリーズはいつ終わる?

フリーズ終了のタイミングはモジュール毎に変わる。
リリースの前後に

  • gnome-x-y という名称のブランチを作成する (x, yはリリースバージョンの番号)
  • 「このコミットをもってgnome-x-yのブランチを作成した」という通知をgnome-i18n@に送信する

を行うことが、終了条件となる。これによって、フリーズがgnome-x-yブランチに引き継がれ、masterは String Freezeが解除される。 なお、リリースの前だろうが、後だろうが、モジュール次第である。

ちなみに、今回String Freezeに煩わされたというのは、String Freezeの解除をしていなかったモジュールがあり、それを知らずにメッセージを操作してしまい、gnome-i18n@に通知が飛んでしまったということである。


参考

http://mail.gnome.org/archives/gnome-i18n/2012-February/msg00047.html
https://live.gnome.org/TranslationProject/HandlingStringFreezes
https://live.gnome.org/ReleasePlanning/Freezes#String_Freeze